「印刷開始3分後、カリカリという嫌な音とともに造形物がベッドから浮き上がる…」
「ノズルの高さ調整は完璧なのに、まだ初層がペロっと剥がれてしまう…」
「何度Zオフセットを見直しても、気づくと端が反り返っている…」
実は、ノズルの高さをどんなに完璧に調整しても、定着不良の原因の9割は「高さ」以外にあるんです。本当の原因は「熱」「汚れ」「湿気」の3つ。
この記事では、ベッドのレベル調整(高さ)はもう完璧というあなたのために、定着不良の「本当の原因」を特定し、確実に初層をピタッと貼るための具体的な方法を、ステップバイステップで解説します。
この記事で解決できること:
- 印刷開始後すぐに剥がれる問題
- 造形物の端だけが浮き上がる「反り」
- 部分的に定着しない「まだら剥がれ」
- 季節や環境で定着が不安定になる問題
まずは原因特定!定着不良の4大カテゴリー
定着不良の「本当の原因」は、大きく分けてこの4つのカテゴリーに分類できます。
| カテゴリー | チェックする症状 | 解決のヒント |
| A. ベッドの清掃と表面 | 造形物が「部分的に」剥がれる。ベッドに指紋や油の跡がある。 | 徹底的に脱脂清掃と接着補助材を使います。 |
| B. 温度と環境 | 造形物の端が浮き上がる(反り)。寒い部屋や風が当たるときに失敗する。 | ベッド温度と冷却ファン設定を見直します。 |
| C. フィラメントの状態 | 吐出時に「パチパチ」音がする。糸引きがひどい、またはフィラメントがもろい。 | 乾燥させるか、新しいフィラメントに交換します。 |
| D. スライサー設定 | 初層のラインが細すぎる、隣のラインと繋がらない。印刷速度が速すぎる。 | 初層の幅と速度を調整します。 |
これらの原因は単独ではなく、複数が重なって定着不良を引き起こしていることがほとんどです。そのため、1つずつ順番に対策していくのが効果的です。
【30秒診断:定着不良はどのタイプ?】
やみくもに設定を変える前に、まず症状から原因を特定しましょう。当てはまる症状をチェックしてください。
| 症状 | 原因 | ジャンプ先 |
| 1.造形物の端だけ浮き上がる | 温度不足・冷却過多 | → ステップ2へ |
| 2.全体がペロっと剥がれる | ベッドの汚れ | → ステップ1へ |
| 3.吐出時に「パチパチ」音 | フィラメントの吸湿 | → ステップ3-1へ |
| 4.初層のラインが細く間が空いている | 流量・速度の問題 | → ステップ3-2へ |
| 5.部分的にまだらに剥がれる | 油分・指紋の付着 | → ステップ1-1へ |
ステップ1:ベッド表面の「見えない汚れ」
定着不良で一番見落とされがちなのが、ベッド表面の汚れです。「きれいに見えるから大丈夫」と思っていても、目に見えない油分が付着しているんです。
これ、油汚れが残ったフライパンに食材を入れたら滑るのと全く同じ。フィラメントが「ツルッ」と弾かれてしまうんですよね。
1-1. 清掃術:油分を完全に除去する3ステップ
ベッド表面の油分は、フィラメントを弾く大敵。以下の方法で徹底的にキレイにしましょう。
【なぜ汚れるのか?】
指から出る皮脂、フィラメントから出る微量の添加剤、空気中のホコリ——これらが積み重なって、見えない「滑り止め」を作っています。特に指紋は、一度触れただけで定着力を30%以上低下させることがあります。
【具体的な清掃手順】
✅ ステップ1:指紋を絶対につけない
- ベッドを触るときは、清潔な手袋を着用
- 素手で触った場合は必ず清掃し直す
- 造形物を取り外すときも、ベッド面に触れないよう注意
✅ ステップ2:IPA(イソプロピルアルコール)での拭き掃除
対応素材:PEIシート、ガラスベッド、磁気シート
- 必ずベッドを冷ましてから作業(重要!熱い状態でIPAを使うとPEIシートが割れる危険があります)
- キッチンペーパーやマイクロファイバークロスにIPAをたっぷり染み込ませる
- 一方向に拭くのではなく、円を描くように全面を拭く
- 別の乾いた布で拭き上げる
- 完全に乾燥させてから印刷開始(約3〜5分)
推奨頻度: 印刷3〜5回ごと、または1週間に1回
私はベッドの掃除でこれを愛用してます!
✅ ステップ3:中性洗剤での水洗い
IPAでも改善しない、または1ヶ月以上清掃していない場合は、この清掃方法を試してください。
- ベッドをプリンターから完全に取り外す
- 台所用中性洗剤(食器用洗剤)を使い、ぬるま湯で洗う
- スポンジの柔らかい面で優しく円を描くように洗う
- 流水でしっかりすすぐ(洗剤が残ると逆効果)
- 清潔なタオルで水気を拭き取り、完全に乾燥させる(一晩推奨)
この方法が、油分や残留物を意外と強力に落としてくれます。
【やってはいけないNG清掃】
| NG行為 | なぜダメなのか |
| 熱いベッドにIPAをかける | PEIシートが熱膨張差で割れる可能性 |
| 研磨剤入りのスポンジを使う | ベッド表面に傷がつき定着が悪化 |
| アセトンを使う(PEIシート) | 表面が溶けて粗くなり逆効果 |
| 洗剤のすすぎ不足 | 洗剤の膜がフィラメントを弾く |
1-2. ベッド素材別の定着対策と相性
ベッド素材によって、定着の「クセ」や適切な清掃方法が異なります。3Dプリンターのベッド素材に合わせた対策を確認しましょう。
| ベッド素材 | 相性の良い材料 | 推奨清掃方法 | 接着補助の要否 |
| ガラスベッド | PLA、PETG | IPA + 中性洗剤(月1回) | スティックのり推奨 |
| PEIシート | PLA、ABS、PETG | IPA(週1回)+中性洗剤(月1回) | 基本不要 |
| 磁気シート | PLA | 中性洗剤のみ(IPAは劣化の恐れ) | スプレーのり |
| BuildTak | PLA、ABS | 水拭き + IPA | ほぼ不要 |
ベッドの素材によって相性の良い清掃方法が違います。
ガラスベッドを使ってる方へ: ガラスは表面がツルツルすぎて、正直、定着しにくいです。清掃はIPAと中性洗剤でOKですが、それだけじゃ足りない。後で説明する「スティックのり」は必須だと思ってください。
PEIシートを使ってる方へ: PEIシートは定着力が高くて優秀なんですが、使い込むとだんだん定着力が落ちてきます。ある程度消耗したら新品に交換という手も。
磁気シートを使ってる方へ: 磁気シートにはIPAを使わない方がいいです。劣化する可能性があるので、中性洗剤だけにしておきましょう。
1-3. 定着力アップのための「接着補助材」活用術
清掃だけでは不安な時や、反りやすい材料(ABSなど)を使う時は、補助材の力を借りましょう。ただし、正しく使わないと逆効果になることも。
【接着補助材の比較表】
| 補助材 | 定着力 | 除去の手間 | 向いている材料 | コスパ |
| スティックのり(PVA) | ★★★ | 簡単(水で落ちる) | PLA、PETG | ◎ |
| スプレーのり(3DLAC等) | ★★★★ | やや面倒 | ABS、PETG、ナイロン | △ |
| Magigoo | ★★★★★ | 普通 | 高温材料全般 | × |
| ヘアスプレー(緊急用) | ★★ | ベタつく | PLA(非推奨) | ◎ |
スティックのりやスプレーのりが初心者の味方
「接着剤やスプレーのりを使うなんて邪道だ」って思ってる人いませんか?私も最初そう思ってました。でも、これが意外と効くんです。
使うのは、文房具店に売ってる普通のスティックのり。トンボ鉛筆の「PIT」とか、コクヨの「GLOO」とか、そういうやつです。
個人的にはトンボ鉛筆の「PIT」がちょうどよくて使いやすかったです!
使い方は簡単:
- ベッドを清掃してから、薄く均一に塗る(厚塗りは逆効果)
- ベッドを50℃くらいに温めて乾かす
- 印刷開始
- 印刷後は水で洗い流せる
特にガラスベッドを使ってる人は、これやるだけで成功率が爆上がりします。スティックのりはあまり厚塗りしないでください。ベッドとノズルの隙間が変わってしまうので注意する必要があります。
スプレーのりですが、ガチガチに印刷物が付着して剥がすのが大変だし換気も必要で、周りにも付着しちゃうのであまりおすすめはしません。初心者はスティックのりから試すのがおすすめです。
ステップ2:「反り」を防ぐ温度設定
造形物の端だけが浮き上がる「反り」。これ、本当に厄介なんですよね。印刷は順調に進んでるのに、気づいたら端がペロンとめくれてる。
反りの原因は、樹脂の「収縮」です。フィラメントは熱で溶けて、冷えると縮む。この縮む力が、ベッドから剥がそうとするんです。特に初層と上層の温度差が大きいと、引っ張り合う力が生まれて反りやすくなります。
2-1. ベッド温度を「ちょっと」上げるだけで劇的に変わる
私が初心者の頃、PLAのベッド温度は「50℃〜60℃が推奨」って聞いて、ずっと推奨温度で印刷してました。でも、それだと端が浮くことが多かったんです。
で、ある日試しに60℃から65℃にしてみた。たった5℃上げただけなのに、反りがほぼゼロになったんです。「え、こんなことで?」って驚きました。
材料ごとの推奨温度:
| 材料 | 標準温度 | 定着改善温度 | 上限温度 | 注意点 |
| PLA | 50〜60℃ | 60〜65℃ | 70℃ | 65℃超えると変形リスク、テスト必須です |
| PETG | 70〜80℃ | 75〜85℃ | 90℃ | 高温だと定着しすぎるときも |
| ABS(ASA) | 90〜100℃ | 100〜110℃ | 120℃ | エンクロージャ必須 |
| TPU(フレキシブル) | 40〜50℃ | 50〜60℃ | 65℃ | 高温で伸びすぎ注意 |
| ナイロン | 70〜90℃ | 80〜100℃ | 110℃ | 吸湿性が非常に高い |
PLAを使ってる方は、普段の温度より5℃〜10℃上げてみてください。例えば、通常60℃なら65℃に。わずかに温度を上げるだけで、冷やしすぎによる反りを防いで、定着を助けます。
ABSやPETGのような反りやすい材料を使う場合は、必ず推奨温度より高めに設定してください。最低でも+5℃。できればエンクロージャ(プリンターを囲む箱)を使って、冷たい外気をシャットアウトするのが理想です。
樹脂は熱で膨張し、冷えると収縮します。この収縮率が材料によって異なり、特に初層と上層の温度差が大きいと、まるで「引っ張り合う力」が生まれます。
- PLA:収縮率 低 (0.3〜0.5%)
- PETG:収縮率 中 (0.7〜1.0%)
- ABS(ASA):収縮率 高 (1.0〜1.5%)
反りは「物理法則」なので、設定で予防するしかないのです。
【具体的なアクション】
PLAユーザーの場合:
- あなたが普段使っている推奨温度より +5℃〜10℃ 上げてみてください
- 例:通常60℃ → 定着改善 65℃
- わずかに温度を上げるだけで、冷やしすぎによる「反り」を防ぎ、定着を助けます
ABSやPETG(反りやすい材料)の場合:
- 必ず推奨温度より高めに設定(最低でも+5℃)
- できればエンクロージャ(プリンターを囲む箱)を使って、冷たい外気をシャットアウト
- 段ボール箱でも効果あり(ただし火災に注意)
温度を上げても剥がれる場合: ベッドの汚れか、冷却ファンの設定を疑いましょう。温度だけでは解決しないケースもあります。
2-2. 冷却ファン設定:初層は絶対0%!
これが最も見落とされがちな原因です。
多くのスライサーのデフォルト設定では、初層から冷却ファンが動いていることがあります。これは定着にとって致命的です。
これ、意外と知らない人が多いんですが、初層は絶対に冷却ファンを回しちゃダメです。
「冷やした方が早く固まっていいんじゃない?」って思いますよね。私も最初そう思ってました。でも違うんです。急激に冷やすと、樹脂がキュッと縮んで、ベッドから剥がれようとします。
特にデフォルト設定のまま使ってる方は要注意。多くのスライサーは、初層から冷却ファンが50%とか回る設定になってることがあります。
【冷却ファンの正しい設定】
| 材料 | 初層(0〜1層目) | 2層目以降 | 理由 |
| PLA | 0% | 100% | 初層を急冷すると即座に収縮して反る |
| PETG | 0% | 30〜50% | 冷却しすぎると層間剥離の原因に |
| ABS(ASA) | 0% | 0% | 冷却すると割れやすい、3層目からFANをONに |
CuraやPrusaSlicer、OrcaSlicerなら、「Regular Fan Speed at Layer」を「2」に設定すればOKです。
2-3. 冬の印刷、めちゃくちゃ失敗しやすい理由
プリンター周辺の環境が、予想以上に定着に影響します。
冬になると印刷の成功率が急に下がって困ってました。夏は完璧だった設定が、冬になると全く使えない。「プリンター壊れた?」って本気で思ったくらい。
でも原因は単純で、室温が下がってたんです。
室温が18℃を下回ると、ベッドの熱がどんどん奪われます。設定上は60℃でも、実際のベッド表面はもっと低くなってる。だから反りやすくなるんです。
特に朝一番の印刷は失敗しやすいです。夜の間に部屋が冷えてるので、暖房で室温を上げてから印刷するのがコツ。
逆に夏は、室温が高いのでベッド温度を5℃くらい下げても大丈夫だったりします。季節ごとに微調整するのが、安定して印刷するコツですね。
【環境チェックリスト】
| チェック項目 | 理想的な環境 | NG環境 |
| 室温 | 20〜25℃ | 15℃以下、30℃以上 |
| 設置場所 | 室内の中央部 | 窓際、エアコン直下 |
| 風の影響 | 風が当たらない | 扇風機、換気扇の近く |
| 床の冷え | 机や台の上 | 冬の床に直置き |
【対策:環境を整える】
✅ 冬場の印刷(11月〜3月):
- 室温が18℃を下回る場合、ベッド温度を通常より +10℃ に
- プリンターを段ボール箱で囲む(簡易エンクロージャ)
- 予熱時間を5分→10分に延長してベッドを完全に温める
- 窓から離れた場所に移動
✅ 夏場の印刷(6月〜9月):
- フィラメントの吸湿に注意(パチパチ音をチェック)
- 室温30℃以上では冷却ファンを初層0%→以降10%に抑えるなどのFAN設定を行う
- エアコンの風が直撃しないように配置
✅ 梅雨時期(5月〜7月):
- 湿度60%以上ではフィラメントを必ず密閉容器で保管
- 乾燥剤(シリカゲル)を一緒に入れる
- 使用前に60℃で6時間乾燥推奨
簡易エンクロージャの作り方
「エンクロージャって高いし場所取るし…」って思ってる方、段ボール箱で十分です。
私も最初は段ボールでやってました。プリンターより一回り大きい箱を用意して、前面を開けたままかぶせるだけ。これで内部温度が5〜10℃上がります。
ただし注意点:
- 完全密閉は危険(熱がこもりすぎる)
- 前面は必ず開けておく
- 火災には十分注意
本格的なエンクロージャは後から買えばいいので、まずは段ボールから試してみてください。
ステップ3:フィラメントの状態とスライサー設定の最終調整
清掃もした、温度も上げた。でもまだ剥がれる。そんな時は、フィラメント自体に問題があるか、スライサーの設定を見直しが必要です。ここで、フィラメントをベッドに「押し付ける力」と「貼り付ける時間」を調整します。
3-1. フィラメントは「生鮮食品」だと思ってください
私、最初は「プラスチックなんだから湿気とか関係ないでしょ」って思ってました。でも大間違い。フィラメントは空気中の水分をどんどん吸います。特に梅雨時期はヤバい。
湿気を吸ったフィラメントを使うと、ノズルから出る時に中の水分が蒸発して「泡」になるんです。そうすると、初層のラインが不均一になって定着が悪くなる。
吸湿してるかチェックする方法:
- 吐出時に「パチパチ」「ジュッ」という音が聞こえる
- 印刷した造形物がもろく、簡単に割れる
- 糸引きがひどく、造形物に細い糸がたくさんつく
- 初層のラインが不均一で、太さがまばら
- フィラメントが白っぽく変色している(特にナイロン)
以下の症状が1つでも当てはまれば、フィラメントが吸湿しています。フィラメントを乾燥させるか、新しいのに交換してください。
新品でも長期保管の影響で湿気を吸っている可能性もあるので、開封したら必ずチェックするポイントでもありますね。何度か湿気を吸っていて困ったことがあります。
ただ、「フィラメント乾燥機、高いんだよな…」って思ってる方、確かに5000円〜1万円くらいします。でも買う価値はあります!
【フィラメント乾燥の具体的手順】
✅ 方法1:フィラメント乾燥機を使う(推奨)
乾燥の目安:
| 材料 | 温度 | 時間 |
| PLA | 50〜55℃ | 6時間 |
| PETG | 60〜65℃ | 8時間 |
| ABS(ASA) | 65〜70℃ | 8時間 |
| ナイロン | 70〜80℃ | 12時間以上 |
「2〜3時間でいいよ」って情報もありますが、完全に乾燥させるには上記の時間が必要です。
推奨製品: SUNLU S1、EIBOS CYCLOPES など
✅ 方法2:密閉容器+シリカゲルで保管
乾燥機がない方は、密閉容器にシリカゲル(乾燥剤)と一緒に保管しましょう。ジップロックやタッパーでOK。湿度計も一緒に入れて、30%以下を維持するのが理想です。
- ジップロックやタッパーにフィラメントを入れる
- シリカゲル(乾燥剤)を一緒に封入
- 湿度計を入れて30%以下を維持
やっちゃダメな乾燥方法:
- ドライヤー → 温度ムラで変形します
- オーブン → 温度管理が難しく溶ける危険
- 天日干し → 紫外線で劣化します
開封後1ヶ月以上経ったフィラメントは、使う前に必ず乾燥させる。これを習慣にすると、トラブルがグッと減りますよ。
3-2. スライサー設定:初層は「ゆっくり、太く」が鉄則
ベッドもキレイ、温度も完璧、フィラメントも乾燥済み。それでもダメなら、スライサーの設定を疑いましょう。初層の定着は、とにかく「ゆっくり」「太く」が鉄則です。これにより、フィラメントがベッドに十分に押し付けられ、接着面積が増えます。
【初層設定のルール】
| 設定項目 | 推奨値 | なぜ効くのか |
| 初層の印刷速度 | 10〜20mm/s | 速度を落とすことで、フィラメントがベッドに十分に圧着・固着する時間を稼げる。あえてゆっくり進むことで、熱がベッドに伝わる時間も増える |
| 初層の押出幅 | ノズル径の100〜120% | 意図的にフィラメントを多めに(太く)出すことで、潰れが良くなり、隣のラインと完全に融合して接着面積を増やす |
| 初層の押出量(Flow) | 100〜105% | わずかに多めに出すことで、ベッドへの圧着力が増す(ただし105%以上は逆に浮く) |
| 初層の高さ | 0.2〜0.3mm | 厚めに設定すると潰れやすく定着しやすい |
初層は「ゆっくり」が基本。10〜20mm/sまで落としてください。
なぜ遅い方がいいのか?フィラメントがベッドに圧着する時間が必要だからです。速すぎると、「置いてるだけ」になって、しっかり貼り付かない。
私は15mm/sに設定してます。「遅すぎて時間かかるじゃん」って思うかもしれませんが、初層だけなので1〜2分しか変わりません。その1〜2分で失敗が防げるなら安いもんです。
もう一つ重要なのが、初層の押出幅。意図的にフィラメントを「太く」出すことで、潰れが良くなって定着力が上がります。
ノズル径が0.4mmなら、初層の押出幅は0.4〜0.48mm(100〜120%)に設定しましょう。
私は0.48mm(120%)にしてます。わずかに多めに出すことで、隣のラインとしっかり融合して、接着面積が増えるんです。
【Curaでの具体的な設定例】
【初層設定】
- Initial Layer Speed: 15mm/s
- Initial Layer Line Width: 120%
- Initial Layer Flow: 102%
- Initial Layer Height: 0.3mm
- Retraction Distance: 5mm(糸引き防止)
【冷却設定】
- Regular Fan Speed at Layer: 2
- Initial Fan Speed: 0%【PrusaSlicer、OrcaSlicerでの具体的な設定例】
【初層設定】
- First layer speed: 15mm/s
- First layer extrusion width: 0.48mm(0.4mmノズルの120%)
- First layer height: 0.3mm
【冷却設定】
- Disable fan for the first: 2 layers3-3. 「Brim(ツバ)」を使って強制的に定着させる
反りやすい造形物には、Brim(ブリム)を付けましょう。これ、めちゃくちゃ効果あって、スライサー設定で、造形物の周りに「ツバ」を数ミリ付けることができます。これにより接地面積が大幅に増えるため、反りや剥がれを物理的に防ぐことができます。反りやすいモデルにはぜひ使いましょう。
【Brim / Raft / Skirt の使い分け】
| 方式 | 接着力 | 除去の手間 | 使うべき場面 | フィラメント消費 |
| Brim(ツバ) | ★★★ | 簡単 | 通常の定着補助。端が反りやすい造形物 | 少 |
| Raft(ラフト) | ★★★★★ | やや面倒(底面が荒れる) | 反りが激しいABS、底面が小さい造形物 | 多 |
| Skirt(スカート) | ★(定着補助なし) | 不要 | 吐出チェックのみ。定着には効果なし | 最少 |
Raft(ラフト)はもっと強力な方法ですが、これは造形物の下に「土台」を作る感じ。反りが激しいABSとかにはRaftの方がいいですが、底面が荒れるので、普通はBrimで十分です。
【Brimの推奨設定】
- Brim幅: 5〜8mm(約8〜12ライン)
- Brimの層数: 1層(基本)
- Brim距離: 0mm(造形物にぴったりくっつける)
ワンポイント: 大きな造形物や、細長い造形物には必ずBrimを付けましょう。フィラメントのコストより、失敗のコストの方が高くつきます。
Brimを除去したところが汚くなる場合もありますが、バリ取りツールなどを使えばきれいに後処理もできます。ぜひ試してみてください!
印刷途中で剥がれた時の応急処置
「印刷開始30分、端が浮いてきた…でもまだ諦めたくない」
こんな時、状況によっては救えます。
端が1〜2mm浮いている場合:
試す価値あり。成功率は約60%。
- プリンターを一時停止
- ベッド温度を+5℃上げる
- 浮いてる部分を指で軽く押さえる(ヤケド注意!)
- 30秒押さえたら手を離す
- 印刷を再開
初層から3層目くらいまでなら効果的です。
端が5mm以上浮いている場合:
成功率は30%くらい。見た目は悪くなりますが、完成はします。
- プリンターを一時停止
- ドライヤー(低温)で浮いた部分を温める
- マスキングテープで固定
- 印刷を再開
全体が剥がれた場合:
諦めて再印刷しましょう。無理に続けると、ノズルがベッドを引きずって傷がつきます。
次回のために原因を特定してください。清掃不足?温度不足?メモしておくと、同じ失敗を繰り返さずに済みます。
よくある勘違いトップ3
初心者が陥りやすい「定着の罠」を3つ紹介します。あなたも当てはまっていませんか?
勘違い1:「ノズルを近づければ近づけるほど定着する」
ノズルが近すぎると、逆に樹脂が横に逃げて密着が悪くなります。
適切な距離は「紙1枚分」とよく言われますが、実際には初層がベッドに「軽く潰れて隣のラインと融合する」程度がベスト。完全にペタンコになるまで近づけるのはNG。
見分け方:
- 成功:初層に軽いツヤがあり、ラインとラインの境目が見えない
- 失敗:初層がテカテカで透明、ノズルから「ガリガリ」音がする
勘違い2:「初層から冷却ファンを回すべき」
初層は絶対に冷却ファン0%!急冷が反りの最大原因です。
多くの人が「冷やした方が早く固まって良い」と考えますが、これは大きな間違い。樹脂は急激に冷やされると収縮し、ベッドから剥がれようとします。
特にPLAは冷却に強いと言われますが、初層だけは例外です。2層目以降は100%でOK。
正しい設定:
- 初層(1層目):冷却ファン 0%
- 2層目以降:材料に応じて調整(PLA 100%、PETG 30〜50%、ABS 0%)
勘違い3:「一度設定すれば季節が変わっても大丈夫」
冬は室温低下で+5〜10℃の温度調整が必要です。
3Dプリンターは精密機械ですが、周囲の環境に大きく影響されます。夏に完璧だった設定が、冬には全く使えないことも。
季節ごとの調整が必要な理由:
- 冬:室温低下 → ベッドの熱が奪われやすい → 温度を上げる必要
- 夏:湿度上昇 → フィラメントが吸湿 → 乾燥が必須
- 梅雨:高湿度 → 定着不良 → 除湿と乾燥を徹底
経験則: 室温が5℃変わったら、ベッド温度も3〜5℃調整すると考えましょう。
よくある質問
実際によくある質問に答えます。
Q. 初層だけベタベタに潰れて、2層目以降は問題ない場合は?
A. Zオフセットが近すぎます。+0.02〜0.05mm調整してください。
初層が「ガラスのように透明」「ノズルからガリガリ音」がする場合も同様です。ノズルとベッドの距離を少し離しましょう。
Q. Brimを付けても端が浮くのはなぜ?
A. 室温が低すぎるか、冷却ファンが初層でONになってる可能性があります。
Brimは物理的に定着を助けますが、温度が足りなければ無力です。室温18℃以上か、初層の冷却ファン0%か、ベッド温度は適切か確認してください。
Q. ガラスベッドに何をやっても定着しない…
A. ガラスベッドは定着しにくいです。スティックのりを必ず使いましょう。
清掃だけでは不十分。スティックのりを薄く塗って、50℃で乾かしてから印刷してください。
Q. フィラメントを乾燥させたのに、まだパチパチ音がする
A. 乾燥温度が低いか、時間が短い可能性があります。
PLAなら50℃で最低6時間。PETGなら65℃で8時間。「2〜3時間でOK」という情報もありますが、完全に乾燥させるにはもっと時間が必要です。
Q. 印刷中は問題ないのに、冷えたら剥がれてた
A. 印刷終了後の急冷が原因です。ベッドを徐々に冷ます設定にしましょう。
多くのスライサーは、印刷終了と同時にベッド温度を0℃に設定します。これが急激な収縮を招いて、剥がれの原因になります。
印刷終了後、ベッド温度を30分かけて下げる設定にするか、印刷終了後すぐに造形物を取り外すといいです(ヤケド注意)。
まとめ
定着不良の原因は「高さ」ではなく、「汚れ」「温度」「湿気」の3つがほとんどです。
まず試してほしいのはこの3つ:
- ベッドをIPAで清掃(週1回、素手で触らない)
- ベッド温度を+5℃上げる(PLAなら60℃→65℃)
- 初層の冷却ファンを0%にする(スライサー設定で変更)
これだけで、成功率が劇的に変わるはずです。
定着不良は運や相性の問題ではありません。原因を1つずつ潰していけば、必ず解決できます。この記事の内容を上から順に試してみてください。
もう二度と「剥がれストレス」に悩まされない3Dプリンターライフを楽しんでください!




