Raspberry Pi Zero 2 WでMCU接続に失敗する2つの原因

Klipperファームウェアを導入するために、コンパクトで安価なRaspberry Pi Zero 2 Wを選んだのはいいけれど、いざMCU(メインボード)と繋ごうとしたら、「接続できません」とか「デバイスが見つかりません」という見慣れないエラーに悩まされていませんか?

実は、高性能なPi 4などとは違い、Zero 2 Wには独自の落とし穴があるんです。私もこのトラブルで1週間ほど格闘した経験があります(笑)。

この記事は、Raspberry Pi Zero 2 Wに限定した、MCUとの接続を安定させるための「2つの裏技的設定」を、分かりやすく解説します!

Raspberry Pi Zero 2 Wの「USB OTG」設定がカギ!

Raspberry Pi Zero 2 Wは、他の大きなラズパイ(Pi 3A+、Pi 4、Pi 5など)とは違い、USBポートの使い方がちょっと特殊なんです。この特殊な設定をしないと、せっかくのMCUとの通信が不安定になってしまいます。

これは、Raspberry Pi Zero 2 Wを「USBシリアルデバイス」として認識させるための大事な作業です。

SDカードの2つのファイルを編集しよう

まずは、MainsailOS(またはKlipperのOS)が入ったSDカードをパソコンに接続してください。中身のファイル群の中から、以下の2つのファイルを編集します。

1. /boot/config.txtの編集

このファイルに、USB OTG(On-The-Go)のハードウェアドライバーを有効にする設定を書き込みます。

  1. ファイルを開く。
  2. 一番最後にある[all]の下に、次の1行を追加する。
dtoverlay=dwc2

意味:Raspberry Piで使われているUSBコントローラーのドライバー(dwc2)を有効にします。

2. /boot/cmdline.txtの編集

このファイルに、起動時に必要なカーネルモジュールを読み込む設定を追加します。
注意!このファイルはすべて1行でつながっている必要があります。

  1. ファイルを開く。
  2. 既存のテキストの一番最後スペースを入れてから、次の文字列を追加する。
modules-load=dwc2,g_serial

意味:USB OTGのコアドライバー(dwc2)と、Raspberry PiをUSBシリアルデバイスとして見せるためのドライバー(g_serial)を起動時に読み込ませます。

設定の確認方法

SDカードをRaspberry Piに戻して起動し、SSHなどで接続後、以下のコマンドで設定が正しく適用されたか確認できます。

確認したいことコマンド正常な表示の例
必要なモジュールが読み込まれたか`lsmodgrep dwc2`
USBシリアルデバイスとして認識されたかls /dev/ttyGS*/dev/ttyGS0が表示される

Klipper通信を邪魔する「おせっかいなサービス」を無効化!

前述のUSB OTG設定をしてもまだ繋がらない、または接続が不安定な場合、Linux(OS)側の設定が原因かもしれません。実は、ModemManagerBRLttyといった、普段は役立つサービスが、KlipperとMCUの通信を邪魔することがあるんです。

これらのサービスは、勝手にUSBポートを使おうとするため、MCUとの安定した接続を妨げたり、デバイスの認識を邪魔したりすることがあります。

自動スクリプトで一発解決!(推奨)

自分でサービスを止めたりマスクしたりするのは面倒…という方のために、Klipperコミュニティで共有されている便利な自動解決スクリプトがあります。これを実行するだけで、問題のあるサービスを自動で検出して無効化してくれます!

curl -sf -L https://raw.githubusercontent.com/Sineos/useful_bits/main/Linux/disable_unwanted_services.sh | sudo bash

スクリプトがやってくれること

  • ModemManagerBRLttyサービスが動いているかチェック。
  • 見つかった場合、サービスの停止
  • サービスの無効化(起動時に動かないようにする)。
  • サービスのマスク(自動で再起動しないようにロックする)。
ModemManager.service found
Stopping ModemManager.service [OK]
Disabling ModemManager.service [OK]
Masking ModemManager.service [OK]

実行後の画面で「[OK]」と表示されれば、無事にサービスが無効化されています!

手動で確認・無効化する方法

手動で確認したい場合は、以下の手順でサービスを確認し、必要に応じて無効化してください。

やりたいことコマンド
ModemManagerの確認`sudo systemctl list-units
BRLttyの確認`sudo systemctl list-units
無効化(例:BRLttyが見つかった場合)sudo systemctl mask brltty.path sudo systemctl stop brltty.path

最終確認と動作テスト

すべての設定が終わったら、必ず再起動をして設定を反映させましょう!

sudo reboot

再起動後、MCUとRaspberry Pi Zero 2 Wを接続し、Klipperの設定画面で無事に接続できるか確認してみてください。

これで、

  • MCUとの通信がより安定する!
  • 接続が断続的に切れる問題が改善される!
  • 信頼性の高いプリント操作が可能になる!

はずです!

もし、この2つの裏技を試しても問題が解決しない場合は、MCU(メインボード)側のファームウェア書き込み方法や、Klipperの設定ファイル(printer.cfg)のシリアルポート指定が間違っていないかなど、別の角度からの確認も必要になります。

焦らず、一つ一つ設定をチェックして、快適なKlipperライフを送りましょう!