フィラメント定着不良の9割はコレ!一層目をピタッと貼る方法

「ノズルの高さ調整は完璧なのに、まだ初層がペロっと剥がれてしまう…」

その通りです。ノズルの高さをどんなに完璧に調整しても、定着不良の原因のほとんどは、「高さ」以外の「熱」や「汚れ」にあるんです。

この記事では、ベッドのレベル調整(高さ)はもう完璧というあなたのために、定着不良の「本当の原因」を特定し、確実に初層をピタッと貼るための具体的なアクションを、ステップバイステップで解説します。

まずは原因特定!定着不良はどこにある?

定着不良の「本当の原因」は、大きく分けてこの4つのカテゴリーにいます。やみくもに設定を変えるのは時間とフィラメントのムダです!自分の症状に近い原因からチェックを始めましょう。

カテゴリーチェックする症状解決のヒント
A. ベッドの清掃と表面造形物が「部分的に」剥がれる。ベッドに指紋や油の跡がある。徹底的に脱脂清掃接着補助材を使います。
B. 温度と環境造形物の端が浮き上がる(反り)。寒い部屋や風が当たるときに失敗する。ベッド温度冷却ファン設定を見直します。
C. フィラメントの状態吐出時に「パチパチ」音がする。糸引きがひどい、またはフィラメントがもろい。乾燥させるか、新しいフィラメントに交換します。
D. スライサー設定初層のラインが細すぎる、隣のラインと繋がらない。印刷速度が速すぎる。初層の幅と速度を調整します。

ステップ1:ベッド表面の「汚れ」を撃退して定着力を上げる

定着不良の最たる原因は、ベッドの表面に付着した「汚染」です。例えるなら、油汚れが残ったフライパンに、せっかくの食材がこびりつかず滑ってしまうのと同じです。

ステップ1:指紋・油分を完全に除去する究極の清掃術

あなたの指や、フィラメントのカスから出る油分やホコリは、フィラメントを弾いてしまうんです。徹底的にキレイにして、接着力を高めましょう。

1-1. 究極の清掃術:油分を完全に除去する

ベッド表面の油分は、フィラメントを弾く大敵です。

  • 指紋は絶対NG!:ベッドを触るときは、なるべく手袋をしましょう。目に見えない油分が定着力を劇的に低下させます。
  • IPA(イソプロピルアルコール)での拭き掃除
    • PEIシートやガラスベッド:ベッドを冷ましてから、IPAをたっぷり染み込ませたキッチンペーパーなどで、指紋やフィラメントのカスを拭き取ります。
  • 中性洗剤での水洗い
    • IPAでもダメな場合、定期的にベッドを外し、台所用などの中性洗剤(食器用洗剤)でぬるま湯で洗いましょう。この方法が、油分や残留物を最も強力に落としてくれます。

1-2. 定着力アップのための「接着補助材」活用術

清掃だけではまだ不安な時や、反りやすい材料(ABSなど)を使う時は、補助材のチカラを借りましょう。

  • スティックのり(PVAのり):
    • 使い方: ベッドに薄く、均一に塗るのがコツです。ノリの膜がフィラメントをしっかりキャッチしてくれます。印刷後は水で簡単に洗い流せます。
  • 定着スプレー:
    • 使い方: さらに強力に貼り付けたい時に使います。ただし、剥がすのが大変になったり、ノリやスプレーのカスが後で残ったりすることがあるので、使いすぎには注意しましょう。

ステップ2:「熱」を最適化して反りを撃退する

フィラメントは熱で溶けて定着しますが、すぐに冷やされると、キュッと縮んでベッドから剥がれようとします。これが大敵の「反り(そり)」です。温度設定と環境で、この「収縮パワー」に打ち勝ちましょう!

ステップ2:ベッド温度と冷却ファン設定で熱をコントロールする

2-1. ベッド温度の「ゴールデンゾーン」を探る

フィラメントが収縮する力を、ベッドの熱で押さえつけるイメージです。

  • PLA:
    • アクション: あなたが普段使っている推奨温度より 5℃∼10℃ 上げてみてください。わずかに温度を上げるだけで、冷やしすぎによる「反り」を防ぎ、定着を助けます。
  • ABSやPETG(反りやすい材料):
    • アクション: これらの材料は収縮率が非常に高いです。必ず推奨温度より高めに設定し、できればエンクロージャ(プリンターを囲む箱)を使って、冷たい外気をシャットアウトしましょう。

2-2. 環境温度のチェック

  • 対策: プリンターが窓際やエアコンの直下など、急激な温度変化がある場所に置かれていないか確認してください。冬場の印刷では、室温が低すぎないように注意が必要です。

ステップ3:フィラメントの状態とスライサー設定の最終調整

最後は、材料の質とフィラメントの「出し方」です。ここで、フィラメントをベッドに「押し付ける力」と「貼り付ける時間」を調整します。

ステップ3:材料の品質を確保し、初層の設定を「太く、ゆっくり」に調整する

3-1. フィラメントの「鮮度」と湿気対策

フィラメントは湿気が大の苦手です。湿気を吸うと、ノズルから吐出される時に中の水分が蒸発して「泡」になり、均一なラインでベッドに密着できません。

  • チェックポイント:
    • 吐出時に「パチパチ」という音が聞こえる。
    • 印刷した造形物がもろい、または糸引きがひどい。
  • 対策:
    • フィラメント乾燥機や密閉されたドライボックスで長時間乾燥させるか、新しいリールに交換してください。

3-2. スライサーの「初層」専用チューニング

初層の定着は、とにかく「ゆっくり」「太く」が鉄則です。

設定項目推奨値なぜ効く?
初層の印刷速度10mm/s∼20mm/s速度を落とすことで、フィラメントがベッドに十分に圧着・固着する時間を稼げます。あえてゆっくり進みましょう。
初層の押出幅ノズル径の 100%∼120%意図的にフィラメントを多めに(太く)出すことで、潰れが良くなり、隣のラインと完全に融合して接着面積を増やします。

3-3. 「ツバ(Brim)」を使って強制的に定着させる

  • ブリム(Brim)の活用: スライサー設定で、造形物の周りに「ツバ」を数ミリ付けることができます。これにより接地面積が大幅に増えるため、反りや剥がれを物理的に防ぐことができます。反りやすいモデルにはぜひ使いましょう。

まとめ:定着不良克服チェックリスト

これらのステップを全て実行すれば、あなたの定着不良は必ず解決します!最後に、解決した後の安定運用に向けて確認しましょう。

5-1. もうこれで剥がれない!安定運用チェックリスト

項目対策は実行済み?
清掃完了IPAまたは中性洗剤で徹底的に脱脂清掃したか?
温度OKPLAなら 5∘C アップ、ABS/PETGならエンクロージャを使ったか?
ファンOK初層0%に設定し直したか?
材料OKフィラメントは乾燥済みでパチパチ音はしないか?
速度OK初層速度を 10mm/s~20mm/sまで落としたか?