「温度が安定しない」「設定温度を超えちゃう!」って、3Dプリンターを使っているとよくありますよね。これ、実はヒーターの運転を最適化できていないのが原因なんです。
この悩みを解決してくれるのが、今回ご紹介する PIDチューニング です!
私も最初は「初期設定で動くからいいや」と思っていたんですが、ノズルを交換したら温度が暴れだして大パニック!海外のフォーラムを調べたら、「まずはPIDをやれ!」って書いてありました。
この記事では、
- PIDチューニングの目的
- Klipperでの具体的な手順
- 初心者がつまずきやすいポイント
を詳しく解説します。
1. PIDチューニングとは?
まずは「PID」がどういうものなのか、そしてなぜ必要なのかを説明しますね!
3Dプリンターの造形品質は、フィラメントの溶解温度に大きく左右されます。温度が不安定だと、フィラメントの出方(流量)が一定にならず、積層のムラや強度の低下につながります。
PIDは「Proportional(比例)/Integral(積分)/Derivative(微分)」の略で、
ヒーターの温度を目標値に合わせて滑らかに制御するアルゴリズムです。
- P(比例): 温度差が大きいほど強く加熱
- I(積分): ズレが時間と共に積もるのを補正
- D(微分): 温度の変化スピードを抑える
これら3つの要素を最適なバランスに調整するのがPIDチューニングです。このバランスが悪いと、温度が安定せず、波打ったり(ハンチング)、設定温度を超えすぎたり(オーバーシュート)しちゃいます。PIDチューニングをすると、設定温度に素早く到達し、一切ブレることなく一定に保たれるようになります。
チューニングが絶対に必要になる理由
3Dプリンターは、部品一つ一つに個性があります。
- ホットエンドのヒーターの強さ
- サーミスタ(温度センサー)の付き方
- ヒートベッドの断熱材
これらが機種や改造によって変わるので、「誰かの設定」をそのまま使っても、あなたのプリンターには合わないことが多いんです。
だからこそ、ノズルやヒーター、サーミスタなどの熱特性が変わる部品を交換・変更した際には必ず再実行することが推奨されます。PIDチューニングをやり直して、その自身のプリンター専用の数値を取得しましょう!
2. KlipperでPIDチューニングを行う準備
KlipperでPIDチューニングをするのは、とっても簡単!でも、高温になるので安全に十分注意しましょう。
2-1. チューニング前の準備リスト
まずは、この3つをチェック!
- プリンターの電源を入れる。
- Mainsail または Fluidd の「コンソール」タブを開く。
- 印刷をしていない状態であることを確認する。
2-2. 【超重要】安全と正確性のための注意点
チューニング中は、ヒーターが最高温度まで加熱されます。次の点に気を付けてください。
- 絶対に触らない!:チューニング中は加熱・冷却を繰り返します。造形エリアに手を入れたり、プリンターを動かしたりするのはやめましょう。
- ノズルのフィラメントは外そう:ノズルにフィラメントが残っていると、溶けて流れ出し、正確な温度測定の邪魔になります。できるだけ取り除いておきましょう。
- 冷却ファンは停止!:ノズルのパーツクーリングファン(造形物を冷やすファン)は、正確な熱特性を測るために必ず切っておきましょう。
3. 実践!ホットエンドとベッドのチューニング手順
いよいよ実践です。コンソールにコマンドを入力するだけでOK!
3-1. ホットエンドのチューニング
まずはノズルをチューニングします。よく使う温度で実行しましょう。
コンソールに以下を入力(例:目標200℃)
PID_CALIBRATE HEATER=extruder TARGET=200待機: Klipperが自動で加熱→冷却を繰り返し、最適なKp/Ki/Kdを計算します。
💡 より正確にしたい場合: コマンドの最後に CYCLES=5 や CYCLES=7 を追加して、繰り返し回数を増やせます。
3-2. ヒートベッドのチューニング
次に、ベッドのチューニングです。これもよく使う温度で実行します。
PID_CALIBRATE HEATER=heater_bed TARGET=603-3. 設定の保存と確認
SAVE_CONFIGSAVE_CONFIG を実行すると、Klipperが自動で設定ファイル(printer.cfg)の末尾に、最適なKp/Ki/Kdの値を書き込み、プリンターが再起動します。
再起動後、コンソールで目標温度を設定してみて、温度がオーバーシュートなくスムーズに上がっていくか確認しましょう!
4. トラブルシューティング
症状考えられる原因解決策
- 温度が暴走!急上昇する: サーミスタやヒーターの配線がショートしている。
- 【即座に電源OFF!】 これは温度暴走(Thermal Runaway)の危険な兆候です。すぐに電源を切り、配線を点検しましょう。
- チューニングが途中で止まる: 目標温度に到達するのに時間がかかりすぎる。
- ヒーターの出力不足や断熱不足が考えられます。断熱材を追加するか、高出力ヒーターを検討しましょう。
- 計算結果が保存されない:
SAVE_CONFIGコマンドを忘れている。- 必ず
SAVE_CONFIGを再実行してください。
- 必ず
- 完了後も温度が上下に暴れる: PID値がまだ最適ではない。
- もう一度、
PID_CALIBRATEを実行し直してみてください。
- もう一度、
5. まとめ
PIDチューニングは、安定した美しい造形をするための必須のメンテナンスです。
- PIDチューニングは、ヒーター温度を安定させるための必須作業
- ホットエンドやベッドを交換したときは必ず再実施する
- Klipperでは
PID_CALIBRATE→SAVE_CONFIGの2ステップで完了
「最近、造形がイマイチだな」と感じたら、まず温度の安定を疑ってPIDチューニングを試してみるのが一番の近道ですよ!

